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高校生BOXER NoRule-DEATHMATCH (1)たった一発の重さいきなり飛び出す本條に対し、上村は自陣コーナーからあまり進まずにまずは体勢を作る。
上村(本條くんがアグレッシブなタイプだというのは僕も聞いている。まずは様子見だ)
上村は両腕を前面に立て、ディフェンスの体勢を固めた。
そこに、駆け込むように飛び込んできた本條がコンタクト。
本條「やっぱりガードか、読み通りだ・・・センパイ、終わったな」
助走の勢いを乗せた本條の攻撃。大振りのストレートだが威力は十分。
が、あまりに軌道が見えすぎたモーション。上村は素早く反応。確実にガードで受け止める。
至近距離に飛び込んだ本條は、全力ラッシュを思わせるような凄まじい手数を繰り出す。
左右、ストレートやフックなど、脈絡のない乱れ打ちのような状態で思うが儘にパンチを繰り出す。
上村(くっ、いきなりこんなに飛ばすのかよ)
スピードにやや押されそうになるが、冷静に対応。全ての攻撃を腕でがっしりと受け止め、一撃の被弾もなくやり過ごす。
が、それでも構わず、本條は攻撃の手数を緩めるどころか、逆に増やす。
上村(こんなスピードで長く持つはずが無い。息が切れた瞬間に反撃で、一気に試合を獲る)
上村の作戦が定まった。上村は完全にガードに集中。身を屈めて両腕を閉じる。攻撃の変化に合わせて、体の確度を微調整し、前面に突き立てた両腕の盾で全ての攻撃を完璧に受け切っている。
膠着のまま、1分、2分・・・時間が経過する。
3分・・・5分・・・上村(お、おかしい・・・本條くんの手数が全く減らない!?)
5分経ってもなお、本條は全力ダッシュのような激しい攻撃を継続している。ガードの隙間から上村は相手の様子を窺うが、息苦しさで口が開いていたり、肩が上下に揺れていたり、全身に汗が噴いていたり、といったスタミナ消耗の兆候が本條には全くない。
一方、上村には大きな状況変化が起こっていた。あまりに多くの攻撃を受け続けた上村の左右の前腕は、最初に比べると1.5倍もの太さに腫れ上がり、多数の鬱血の痕が紫に浮き上がっていた。両腕は激しい痛みを発している。
上村(このままじゃ僕の腕がヤバい)
上村は、攻撃を腕で受け止めるブロックではなく、攻撃をステップや体の捻りで躱すようにディフェンスチェンジを試みる。
が、動けば動くほど、本條の攻撃は執拗に上村の両腕を追尾し、確実に狙って来る。
上村(本條くん、最初からガードの穴じゃなくて、ガード自体を狙っていたんじゃ・・・)
そう思った次の瞬間、上村の腕にこれまで以上の強烈な激痛が走った。
上村「ぐあっ」
思わず、痛みに声を発してしまう。
本條の攻撃は止まず、腕をさらに狙い撃つ。
上村の腕は被弾する度に痛みの度合いを増し、尋常ならざる強痛が全身を貫く。
上村(マズい、骨がやられたかも)
遂に上村は、激痛を堪えきれずにガードを解いてしまった。左右に開かれた上村の腕。正面のボディが無防備に晒されてしまう。
が、なおも本條は上村の前腕をピンポイントで攻撃!
上村(クッ、本條くんまだ僕の腕を狙うのか!)
激痛はやがて感覚の麻痺へと変わり、攻撃に晒され続けた上村の両腕は損傷で運動機能を一時的に失ってしまった。
上村「な!?僕の両腕が言うことを聞かない!」
意思に反して、腕がどんどん落ちてしまう。どんなに力を入れようとしても、腰から上には上げることができない。
本條「
いっちょう上がり!!」
本條は軽い様子でそう言うと、瞬間的に拳を固く握りしめた。革のグローブがギュッと鳴る。これまでの両腕狙いの軌道とは明らかに異なる軌道で、その拳が放たれた。
本條「
センパイィ!ボディがガラ空きだ、ぜ!!」
ドボッッ!!守るべきガードが無い、無防備なボディに本條の拳が打ち込まれる!
腰を落として重心を低くしたあと、両脚のバネを使って体全体を跳ね上げ、まるでアッパーカットのように、低い位置から円弧を描くように突き上げられた拳は、上村の腹の中央に見事に打ち込まれた。
盛り上がった上腕二頭筋が支持するボディ・アッパーの勢いはまだ死なず、そのまま上村の腹を体ごと持ち上げるように突き上げ上昇する。
拳が突き入れられた腹を中心にして、持ち上げられた上村の体が"へ"の字に二つに折れる。本條の拳は胸の高さまで打ち上げられたところでようやく静止した。
上村「か・・・ぁ・・・ぁ」
拳の上に腹を乗せられ、体ごと持ち上げられてしまった上村の口からは、ヨダレに塗れたマウスピースが押し出された。
大量のヨダレが糸のようにマウスピースに絡みつき、ゆっくりと真っ直ぐリングのマットへ落下。
上村「あ・・・がぁ」
言葉にならない呻き声。半開きの口からは何本ものヨダレの糸が、マットへと垂れ落ち続ける。
上村の呼吸が止まっている。たった一撃の本條のボディ・アッパーは、それほどの威力だったのだ。
拳の上でグロッキー状態の上村を、本條はそのまま拳を真っ直ぐ上方に、瞬間的に突き上げた。
上村の体が上へと高く飛ばされる。
うつ伏せ状態で2mもの高さまで打ち上げられた体は、やがて落下に転じ、そのままの体勢で固いリングマットに全身を打ち付けた。
たった1発のボディへの攻撃でダウンを喫してしまった上村。苦しそうにのたうつ上村。
通常のボクシングの試合なら、カウントを取るまでもなくTKOを宣言しても良いほどの完全なるダウンだ。だが、このデスマッチではダウンは無く、カウントも取られない。上村が自力で立ち上がるのを待つ為に、本條は反対側のコーナーへ一旦退く。
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高校生BOXER NoRule-DEATHMATCH (3)次回予告
わずか1発のボディ・ブローに沈んだ上村。
必死の思いで立ち上がろうとする上村を、対角コーナーに退いた本條が獲物を見る目で狙う。
ルール無用、デスマッチならではの本條のえげつない攻撃が、さらに上村を襲う!
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